当科では、大腸がんを中心に、小腸から大腸の主に悪性腫瘍の診療を行っています。大腸がんについては年間120件前後の手術(結腸がん70~80件、直腸がん30~40件/年)を行っており、その9割近くをより低侵襲な腹腔鏡下手術で行っています。また、2018年からは直腸がんに対してロボット支援下手術を導入し、ロボットの多関節機能・3D機能などのメリットを生かし、狭い骨盤内でのより精密な手術を追及しています。
一方、肝転移や他臓器浸潤を伴う高度進行大腸がんに対しては、腹腔鏡下の大腸がんと肝転移巣の同時切除術や開腹による骨盤内臓全摘術など、侵襲の大きな手術も行い、がんの積極的な治癒切除を目指しています。また、現在の大腸がん治療には不可欠な抗がん剤治療や、下部直腸がんに対する術前化学放射線治療などの集学的治療も積極的に行い、大腸がん治療成績の更なる向上を目指しています。
大腸がん以外では、家族性大腸ポリポーシスや潰瘍性大腸炎に対する腹腔鏡下大腸全摘術などの治療も担当しており、消化器内科との連携や専任の認定看護師による人工肛門外来を行うなど、小腸と大腸の疾患をトータルに診療できる体制となっています。
日々進歩する手術手技・抗がん剤治療などをいち早く導入し、より安全・安心で、質の高い医療を患者の皆様に提供できるよう努めてまいります。
大腸癌について
生活習慣の欧米化などに伴い日本の大腸がん患者数は増加しています。一方、近年の抗がん剤治療の進歩や「大腸癌治療ガイドライン」の導入による大腸がん治療の標準化により、その治療成績は向上してきています。例えば当科における大腸がんの治療成績(5年生存率)はStageIで98.2%、StageIIは85.0%、StageIIIaは85.8%、StageIIIbは62.3%、StageIVは20.6%となっており、結腸癌に限定すると更に良好な結果となっています(Stageは大腸癌取り扱い規約第8版による、図1&2)。当科では消化器内科と連携し厳密な術前診断に基づいて、「大腸癌治療ガイドライン」に沿った大腸がん診療を行っているほか、新規手術手技(ロボット支援下手術)や新規抗がん剤の導入など、大学病院として先進的な治療をいち早く提供できる体制づくりを行っています。

図1:2008年までの大腸癌456例の治療成績(疾患特異的生存率)

図2:2008年までの結腸癌258例の治療成績(疾患特異的生存率)
また大腸癌の腹腔鏡手術率は徐々に増加しており、2018年は85%ほどが腹腔鏡手術となっています(図3)。以前の開腹による手術でも平均の術後在院日数は12日未満(80歳以上の高齢結腸癌:11.5日、79歳以下:11.8日)であり、低侵襲手術による更なる早期回復を目指しています。
一方、他臓器浸潤を伴う高度な局所進行大腸癌症例や肝・肺転移の症例に対しては、各臓器の専門医がそろう大学病院の特徴を生かし、県内各施設からの紹介を積極的に受け入れ、手術・集学的治療を行っています。 受診者の皆様の安全・安心を第一に、より質の高い確かな医療を提供すべく、日々努力してまいります。

腹腔鏡下大腸癌手術の手術風景