消化器外科、乳腺・内分泌外科

上部消化管(食道、胃、十二指腸)

 

上部消化管診療グループ

 当科では、上部消化管(食道,胃, 十二指腸)の悪性疾患(がん)に対して、手術療法を中心とした集学的治療の提供を実践しています。食道がん手術は年間約30例行っており、食道外科専門医や食道科認定医を有する専門チームによる診療体系を展開しています。さらに術後肺炎などの合併症を低下させる目的で、歯科医や言語聴覚士、栄養士などのさまざまな職種との連携を術前から導入し周術期管理を行っています。また手術の低侵襲化を図るべく、そのほとんどの手術を胸腔鏡、腹腔鏡で行っています。さらに2021年からロボット手術を導入し、より精緻な手術を行っています。また手術だけでなく、抗がん剤を用いた化学療法、放射線療法を組み合わせた集学的治療を実践し、治療成績の向上に努めています。

 胃がん手術は近年増加傾向にあり、現在年間約100例行っています。治療に関しては胃がん治療ガイドラインに準じ、病期の正確な診断のもとにQOL(quality of life)を保った必要かつ十分な手術を実践しています。手術は多くの症例で腹腔鏡手術を施行しており、早期胃がんのほとんどが腹腔鏡下に行われています。また比較的難易度の高い胃全摘術や噴門側胃切除術に関しても腹腔鏡手術を導入し行っています。さらに2017年からはロボット手術を導入し、ロボット支援下に胃切除術を行っています。高度に進行した胃がんに対しても、多臓器合併切除、拡大リンパ節郭清を含め積極的な拡大手術を行い、さらに術前術後の抗がん剤治療を組み合わせ、治療成績の向上に努めております。

食道

食道の手術は消化器手術の中でも患者さんへの負担が大きく、手術としても難易度が高いものです。食道は胸の中にあり、食道を治療するだけであれば、胸の手術のみで治療可能ですが、食道は食べ物が通る場所であり、新たな食物の通過経路を作る(再建)必要があります。このために胃を使い再建するためにお腹の手術も必要になります。つまり、食道の手術には胸部の操作と腹部の操作が必要になり、2つの傷ができることになります。このため、食道の手術は通常の手術の2倍時間がかかり、患者さんもからだへの負担が2倍かかります。このような負担をより軽減させるためにわれわれは、鏡視下手術を積極的に導入しています。これは、通常のように大きく切って手術を行うのではなく、1cmくらいの傷を数カ所につけて、カメラ越しに手術を行う方法です。胸腔鏡手術ではポートと言われる筒の中にマジックハンドのような鉗子を入れて手術を行いますが、2021年からはポートに多関節機能を持ったロボットの手を入れることにより、より繊細に手術を行うことが可能になりました。このことにより、患者さんの体への負担が少なくなり、術後の早期離床や食事摂取、退院に結びついています。なお、食道がん手術は年間約30例を経験しており、食道外科専門医や食道科認定医を有する専門スタッフによる診療体系を展開しております(図1)。


図1 食道がん手術件数

 

さらにわれわれは、通常では根治的に切除することができないと判断される食道がんに対してより積極的に抗がん剤や放射線治療を組み合わせる(化学放射線治療)ことにより、切除可能となった食道がん患者に対して時期を逸することなく手術を行い、良好な成績をあげております。例えば食道がんが気管に食い込みかけている(浸潤が疑われる)症例に対して、術前化学放射線治療を行うことにより手術が可能となり、再発なく経過している症例を多数経験しております(図2)。

気管に浸潤が疑われる食道癌、放射線化学療法で切除可能になった

また、食道がんは喫煙や飲酒によるがんの発生が言われており、これは同時に肺がんや咽頭がんになる危険が存在します。当科では、このような患者背景を加味し、2次がんの発生の早期発見や他科との連携を密に行い、外来診療に当たっております。

胃は腹部に存在する臓器であり、摂取した食物の貯蔵や消化を主な役割としています。上部消化管診療グループでは胃がんや胃の壁の中にできる腫瘍(粘膜下腫瘍)などの治療を行っています(図3)。


図3 胃がん手術件数

 

胃がんの治療は胃がん治療ガイドライン上も手術が第一選択となっております。当科での、胃がん手術件数は近年増加傾向であり、年間約100例になります。手術前に病気の進み具合を正確に診断することを心がけ、QOL(quality of life)を保った必要かつ十分な手術を実践しております。また、多くの症例で腹腔鏡手術を施行しております。さらに2017年よりロボット支援による胃切除術を導入しています。腹腔鏡手術における術後の在院日数は2022年では平均11日となっております。

 

  また、高度に進行した胃がんに対しては、多臓器合併切除、拡大リンパ節郭清を含めた積極的な拡大手術を行い、さらに術前術後の抗がん剤治療を組み合わせ、治療成績の向上に努めております。 胃粘膜下腫瘍(GISTや平滑筋腫など)は比較的稀な疾患です。胃粘膜下腫瘍においては腫瘍を切除することが治療とされています。通常では胃を部分切除しますが、腫瘍の部位により胃を最小限に切除する目的で消化器内科との合同手術を行っています。具体的には、胃の内側から胃カメラで腫瘍の周囲を切開し(図4a)、腹腔鏡で腫瘍を摘出し、胃の切開した部分を閉じる(図4b)という方法です。当科では現在までに合同手術25例を含み腹腔鏡下胃部分切除を74例行っております。

胃カメラでの切開、腹腔鏡での閉鎖

図4a:胃カメラでの切開                              図4b:腹腔鏡での閉鎖                                   

                           

十二指腸

2022年から十二指腸腫瘍(腺腫、早期癌)に対し、腹腔鏡内視鏡合同手術を開始しました。
胃の粘膜下腫瘍に対する合同手術で培った技術を応用しています。十二指腸は、壁が胃に比べて極めて薄いため、胃と同じように内側から粘膜下層切除を行うと、穴が開く(穿孔)する可能性が非常に高くなります。そこで、十二指腸を外側から外科的に縫って補強することにより穿孔を予防します。現在までに4例行っており、全員合併症なく退院されています。これは、高難度新規医療として行っています。

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